社会不適合者のシネマ日記

映画・商品レビュー

『異端の鳥』(2019)最後まで視聴した自分を褒めてやりたい[ネタバレあり]感想・考察

あらすじ

第二次大戦中、ナチスホロコーストから逃れるために、たった一人で田舎に疎開した少年が差別と迫害に抗い、想像を絶する大自然と格闘しながら強く生き抜く姿と、異物である少年を徹底的に攻撃する“普通の人々”を赤裸々に描いた本作

原作は自身もホロコーストの生き残りである、ポーランドの作家イェジー・コシンスキが1965年に発表した代表作「ペインティッド・バード(初版邦題:異端の鳥)」。ポーランドでは発禁書となり、作家自身も後に謎の自殺を遂げた“いわくつきの傑作”を映画化するために、チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督は3年をかけて17のバージョンのシナリオを用意。資金調達に4年をかけ、さらに主演のペトルコトラールが自然に成長していく様を描く為、撮影に2年を費やし、最終的に計11年もの歳月をかけて映像化した。

http://www.transformer.co.jp/m/itannotori/intro-story/ より抜粋

トップレベルのグロさ

目を引くポスターは、土に埋められた少年の姿です。そして、戦争映画であることを知り、視聴することにしました。大半のシーンは残虐的ですが、主人公である少年の澄んだ瞳が希望を感じさせます。

「ミレル」の章では、ある男が目玉をスプーンで抉り取るシーンがあります。私はこのシーンが一番苦痛でした。映画館では、途中で多くの観客が退席したというのも納得です。

ユダヤ人輸送列車から逃走した人を射殺するシーンも残酷でした。

考察

①なぜ村人たちから迫害されたのか?

最初に住んでいた叔母の家が全焼し、近くの家を探し回ったところ、村人たちから暴力を受けました。では、なぜ村人たちから迫害されたのでしょうか。その原因は、魔術師の言葉に関係していました。

黒い悪魔の目をしてる

少年の抜けた歯を見た男は、「彼は悪魔の手下だ」と言いました。

ユダヤ人に特有の身体的特徴はないようですが、村人たちは、黒い目を持つ彼をユダヤ人だと決めつけました。

②なぜ鳥にペンキを塗ったのか?

鳥飼いの男は、小鳥にペンキを塗って空に放します。色のついた小鳥は他の鳥の群れに襲われ、死んでしまいます。この作品の原題は『Nabarvené ptáče / The Painted Bird』であり、「塗られた鳥」の意味があります。この作品は、どこでも迫害されるユダヤ人の彼へのオマージュではないでしょうか。また、鳥飼いの男のように、誰にでもある嗜虐心を描いたのだと思います。

③孤児院のトイレでのシーンは何か?

「ニコデムとヨスカ」では、用を足しに行く主人公を孤児院の少年たちが軽蔑の目で見つめます。少年たちは、主人公がユダヤ人であると判断したのでしょうか。少年たちは、主人公が性器に割礼を受けていることを知っていたのかもしれません。

④ラストシーンの意味は?

バスの中で、父親と少年が座っています。自分を過酷な環境に追いやった父親を少年は憎んでいます。しかし、ふと父親の手首を見ると……。囚人番号がありました。父親はユダヤ人であり、強制収容所にいたことを知りました。

おすすめしない人

この作品は、日本ではR-15に指定されています。非常に暴力的なシーンが多いため、グロ耐性がない方にはおすすめできません。

戦争映画好きなら楽しめるかも

バリー・ペッパーは、この作品でソ連軍の狙撃手ミートカを演じています。彼は『プライベート・ライアン』にも出演しており、この作品は戦争映画を変えたとされる有名な作品のひとつですね。監督はスピルバーグでした。

関連作品

シンドラーのリスト』は、スピルバーグ監督のモノクロの戦争映画であり、比較的長時間の作品です。この作品は、この作品と似た特徴を持っていますね。

私はまだ鑑賞していませんが、『炎628』の演者も出演しています。

 

↓『異端の鳥』の原作小説です。