『A Boy Named Charlie Brown』に込められたメッセージ
森博嗣氏は、著書『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』の中で、自身が初めて観た映画『A Boy Named Charlie Brown』(邦題:スヌーピーとチャーリー)のタイトルについて言及しています。
そういえば、最小に観たチャーリー・ブラウン(有名なスヌーピーの飼い主)の映画のタイトルが、「A Boy Named Charlie Brown」だった。「チャーリー・ブラウンという男の子」という意味だ。どうして、単に「チャーリー・ブラウン」というタイトルにしなかったのだろう、とそのとき僕は思った。
引用:人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか (新潮新書) 電子書籍 No.2123
[中略]
その言い回しには、「みんなはまだ知らないかもしれないけれど、この映画を観ているうちに、チャーリー・ブラウンがどんな子かわかりますよ」というメッセージを持った響きなのである。
このタイトルからは、まだ無名の少年の物語を描くという意図が感じられます。
例えばスーパーマンが主人公なら、「A Man Named Superman」という言い回しはしないでしょう。なぜなら、スーパーマンは誰もが知っているからです。実際にスーパーマン一作目の原題は単に「Superman」です。
この映画をきっかけに「名前」という概念について、抽象的な思考が展開されています。普通なら深読みしないことも、しっかりと考える。森博嗣氏の常識を疑う姿勢が伺えます。
私はこれと似たような、気になっていたことがあります。
『Beauty and the Beast』のBeautyには、なぜTheがつかないのか
言わずとしれたディズニーの『Beauty and the Beast』。BeautyにはなぜTheがつかないのか、疑問に思ったことがあります。ということで、理由を調べてみました。
"The Beast"が指し示すのは、作中の"野獣"であることは明らかです。
"Beauty and the Beast" のタイトルにおいて "beauty" に定冠詞 "the" がつかない理由は、"beauty" が固有名詞として扱われているからではないでしょうか。固有名詞は通常、定冠詞は使用されません。この場合、"Beauty" は主人公のベルを指し示す固有名詞として使用されており、フランス語での彼女の名前が "Belle" であることからも、"Beauty" が特定の人物を指す固有名詞だからです。
例えるなら、美由紀と(その)野獣、みたいな。
なお、原作である"La Belle et la Bête"には、どちらにも定冠詞がついていますね。美女、野獣はそれぞれ女性名詞です。この場合の"La Belle"は固有名詞ではなく、一般名詞の「美女」のようです。紛らわしい。
まとめ
映画タイトルの言葉選びには、売れやすくするためではなく、作品への思い入れや狙いが隠されているかもしれません*1。普段何気なく見ている映画タイトルにも、注目してみると新しい発見があるかもしれませんね。タイトルに隠された意味を考えることで、映画を観る楽しみがさらに広がるでしょう。