はじめに
フランスの女性監督ジュスティーヌ・トリエによる作品です。カンヌのパルム・ドールを受賞しており、批評家からの評価は良さそうです。
あるフランスの山荘から夫サミュエルが落下死し、サミュエルの妻ザンドラには、疑いの目がかかります。ザンドラは裁判所で追及されてしまいます。果たして真相は・・・。
感想
- P.I.M.P ・・・序盤では、50セントの「P.I.M.P」(歌詞なし)が流れます。ザンドラの夫がなぜこの曲を聞いていたかが、キーのひとつになっています。歌詞を調べてみたところ、結構下品な歌詞でした。ちなみに、P.I.M.Pは「売春斡旋業者」を意味するようです。*1
- 極めて具体的なセリフ・・・なぜ極めて具体的かは、映画を観ていただけたら分かります。主人公トリエと男性の関係は、本作の監督家トリエと、脚本家のアラリとの関係のようです。嫌になるほど生々しい夫婦喧嘩のセリフは、2人の実際のエピソードを基にしたとしか思えません。
- 傍聴しているかのよう・・・裁判所では検察や トリエ監督はドキュメンタリー映画出身だからか、ドキュメンタリー風の演出もありました。それによって、実在感が出ています。脚本には刑事事件専門弁護士の指導があり*2、リアリティの裏付けがあります。検事や検察はザンドラを追及しますが、その過程でジェンダーや性的関係でさえ公開されています。
- 記憶は不正確・・・弱視である少年 は、1度目の証言と2度目の証言に食い違いがあります。無意識に記憶が変わってしまうことはありますよね。記憶は案外不確かなものです。
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解剖・・・サミュエルとザンドラ、どちらに共感すべきか迷ってしまいます。人は複雑であるのに、単純化して評価してしまうことに気付かされます。その点で、人間というもの、そして私自身を解剖しているような気分になりました。
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「スヌープ」の演技が凄い・・・殺伐とした本作で唯一の癒やしが、ボーダーコリーのスヌープです。特殊な演技をしています。もちろん、動物の安全に十分注意したとのこと。どう撮影したかは、この動画→Behind the Scene: How the Dog from 'Anatomy of a Fall' Learned to Play Dead on Screen - YouTubeで解説されています。
ジュスティーヌ・トリエ監督って?
ジュスティーヌ・トリエ(Justine Triet)は、フランスの映画監督、脚本家、編集技師です。彼女はフランス国内外で高い評価を受けており、数々の賞を受賞しています。
第96回 #アカデミー賞 ®にて#落下の解剖学 が見事 #脚本賞 受賞🏆✨
— 映画「落下の解剖学」公式 (@Anatomy2024) 2024年3月11日
世界が絶賛する、傑作ヒューマンミステリー
これは、事故か、自殺か、殺人か――
登場人物の数だけ真実が現れる中で
あなたは何を信じるのか?
本年度映画賞 80受賞 226ノミネート!
大ヒット上映中!#アカデミー賞2024… pic.twitter.com/oFCaz1y6Jo
微妙なところ
音楽はあるものの、劇伴はないので、人によっては眠くなってしまうかもしれません。152分は少々長く感じましたね。トイレに行くことを忘れずに笑
まとめ
まるで裁判所で傍聴しているかのような、初めての体験です。真犯人を突き止めるというよりは、落下死事件までの過程を楽しむ映画でした。腹落ちしない謎があり、また観に行こうと思います。