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『ロボット・ドリームズ』映画の後に原作漫画を読んでみた/原作と映画の違いは

本記事はロボット・ドリームズのネタバレを含みます。

映画「ロボット・ドリームズ」と原作の魅力を徹底比較

サラ・バロン原作のグラフィックノベル『ROBOT DREAMS』は、2007年の出版以来、多くの読者を惹きつけてきました。無声の絵だけで友情や喪失の物語を紡ぎ出す独特のスタイルは、子どもから大人まで幅広いファンを獲得しています。  
そして2023年、パブロ・ベルヘル監督によるアニメーション映画としてスクリーンに登場し、アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートするなど、映画祭でも高い評価を受けました。原作の深い魅力を残しつつ、大画面の映像表現ならではの新たな魅力も生まれています。

本記事では、原作と映画それぞれの特徴を比較しながら、その魅力をお伝えします。

1. シンプルな原作 vs. ディティール豊かな映画

原作のシンプルな作画

出典:グラフィックノベル「ロボット・ドリームズ」中面 - 「ロボット・ドリームズ」原作本発売、日本限定のカバーはサラ・バロン描き下ろし [画像・動画ギャラリー 2/8] - 映画ナタリー

原作は全体的に淡白なタッチ・シンプルな背景で、言葉をほとんど使わずにストーリーが進むのが大きな特徴です。  
カートゥーン感あるキャラクターも可愛らしく、子ども向けの絵本という印象があります。 サラ・バロンは犬を飼っていたためか、犬系のキャラクターが多く感じます。
無声でありながらも、犬(ドッグ)とロボット、そして周囲の動物たちのわずかな表情変化や行動だけで感情を丁寧に伝えています。

映画のディティー

一方、映画では大画面に映し出すことを想定して、キャラクターや背景により多くのディティールが加えられています。  原作ではどこかの国という設定でしたが、映画では監督が経験した、80年代のニューヨークが舞台となりました。実在する食品が多数登場するのも見どころです。
メイキング動画からは、美術デザイナーが原作の雰囲気を損なわないように気を配りつつ、アニメーションとして成立するように立体化した様子が伺えます。*1

2. 無声の原作と映画のエモーション

原作の静かな進行

原作『ROBOT DREAMS』のストーリーは、映画版と比べると淡々と地味に見えます。
しかし、その分"想像力"や"余白"が多く、読者はコマとコマの間にある感情を自身で埋めて、物語を深く味わうことができます。  
まさに友情や喪失、そして成長を、言葉ではなく絵柄の変化と構図で表現する児童書の魅力が詰まっています。

映画の音楽とアニメーション効果

映画では音楽や動きによって感情がダイレクトに伝わってくるため、「孤独感」「胸が締め付けられる」といった観客の感情を強く引き出します。  
実写映画畑のパブロ・ベルヘル監督らしく、劇的な演出で視聴者を驚かせます。さらに、より現実的な設定と感情描写で、人生経験を重ねた大人がより物語に入り込みやすいポイントとなっています。

3. 物語の始まりと細部の違い

原作の唐突な始まり

原作では、孤独な犬(ドッグ)が通信販売でロボットを注文する場面から物語が急に始まります。  
この唐突なスタートがファンタジックでシュールな雰囲気を醸し出し、読者の想像力をかき立てます。

映画の丁寧な描写

一方、映画版ではドッグが深夜のテレビCMに救いを求めるようにロボットを注文する過程が描かれ、ドッグの日常や身にしみる孤独感をより具体的に理解できる構成になっています。ドッグの日常を丁寧に表現することで、観客が「私もドッグみたいなところあるかも?」感情移入しやすくなっています。

4. ビーチとショックの表現

原作のワンフレームで描かれる衝撃

ビーチでの出来事が物語の大きな転機となり、ロボットが錆びついて動けなくなることで犬と離れ離れになる展開が始まります。  
原作では、ビーチが閉鎖されるシーンが1ページフルのコマで描かれ、ページをめくった読者に強いショックを与えるような演出を施しています。

映画でのショック演出

映画でもこの場面のように構図や時間の流れを巧みに再現し、観客に同じような衝撃を味わわせる努力が見られます。
映画的なスケール感と間の使い方によって、よりダイナミックな印象が残ります。

5. キャラクター設定の違い

原作特有のファンタジックな動物たち

原作では、ドッグやロボットのほかにダックが飛べたり、アリクイと仲良く家で食事を楽しんだりと、よりファンタジックな設定が多めです。
ドッグは当初アリクイと仲良く遊んでいましたが、アリを嫌々食べるなど、異文化交流で生じる"すれ違い"のメタファーも巧みに描かれています。

映画でのリアリスティックな味付け

映画ではアリクイとそり滑り競争をするものの、すれ違いを乗り越えられず孤立する場面が描かれるなど、よりリアルな人間関係のようなニュアンスを含みます。  
ドッグとロボットの性格付けも少し変わり、映画版のドッグに対して「受動的すぎる」と感じる声もあり、キャラクター像の違いは賛否が分かれます。

6. 子ども向けの原作 vs. 大人も楽しめる映画

アマゾンでの評価も高い

児童向け要素が強い原作

原作はファンタジー要素が重視され、子どもが読んでも分かりやすく、無声でありながらもやさしい絵柄が魅力です。  
複数の児童書賞を受賞するなど、絵本としても高い評価を得ています。

映画の大人向け視点

🔺ロボットドリームズ 本編冒頭

映画は原作の魅力を残しつつも、より現実味のある表現を加え、大人が感情移入できる要素が盛り込まれています。  
音楽や映像を通じて、"成長"や"喪失"といったテーマがさらに深掘りされ、誰もが一度は経験するであろう人間関係の儚さへ思いを馳せることができます。

まとめ:それぞれの形で描かれる「友情と喪失」

原作『ROBOT DREAMS』と映画「ロボット・ドリームズ」は、同じ物語を軸にしながらも、その表現方法やディティールに違いがあります。どちらも"友情の尊さ"や"喪失の痛み"をテーマとして扱いますが、原作は無声ゆえの想像力を刺激する作風、映画は音と動きを活かして感情を強烈に揺さぶる表現が特徴です。

ファンタジックな世界でありながら、出会いやすれ違いによる別れ、孤独や成長をリアルに感じさせるのは、この作品ならではの大きな魅力でしょう。  
原作を味わったあとに映画を観るもよし、映画から入って原作に戻るもよし。どちらの体験も、きっとあなたの心に残るはずです。ぜひ両方を楽しんでみてください。

 

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🔻私はiPadKindleアプリで読みました。英語の擬音が多めですね。

サラ・バロン氏による原作漫画。私はこちらを読みました。書籍版にこだわらなければ、Kindle版をiPad等で読むのもおすすめです。セリフはないものの、擬音や看板は英語なのが小さなハードルかもしれません。映画より、ちょっとゆるい画風に癒やされましょう。

🔻待望の日本語翻訳版。今ならAmazon限定の、待ち受け画像特典があるみたいです。

 

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*1:メイキング動画- YouTube