
ネタバレ感想
謎の多い作品『アフターサン』(原題:aftersun)を、私なりに考察しました。
あらすじ
『アフターサン』は、11歳のソフィーと30歳の父親カラムがトルコのリゾート地で過ごす休暇を描いた作品です。20年後、大人になったソフィーが当時の思い出を振り返り、知っていた父親と知らなかった父親の姿を和解させようとする物語が展開されます。
記憶と現実の複雑な関係
この映画の特徴的な点は、大人のソフィーが子供時代のホームビデオを見ながら、過去の出来事を回想するという構造です。DVカメラの映像が客観的な記録を提供する一方、通常の映像はソフィーの主観的な記憶を表現しています。この手法により、記憶の不確実性と、過去を理解しようとする現在の努力が巧みに描かれています。
複雑な家族関係の探求
ソフィーと父カラムの関係
- 二人だけの旅行の背景には、カラムとソフィーの母親との複雑な関係が示唆されています。
- 公衆電話でのカラムと母親の会話から、両者の関係が良好でないことが窺えます。
- この旅行は、別居状態にある親子の関係性を表現しています。
カラムの内面的葛藤
経済的困難:
地面に落ちたタバコを拾って吸う場面や、ソフィーの歌のレッスンに関する会話から、金銭的な苦境が示唆されます。
精神的苦悩:
ホテルで一人泣くシーンや、本作を象徴する「アンダー・プレッシャー」の歌詞は、カラムの内面的な苦悩を表現しています。
これらの要素は、カラムが深刻な精神的危機に直面していることを示唆しています。
エンディングの解釈
- 1. 大人のソフィーの現在
同性パートナーと同じベッドにいるシーンから、ソフィーがレズビアンである可能性が示唆されています。なお、ビリヤードをしていた少年同士がキスをしているシーンもあります。 - 2. カラムの運命
カラムの死亡は明示されていませんが、大人のソフィーが記憶との対話を行っていることから、彼の死が暗示されています。 - 3. ラストシーンの象徴性
ラストシーンの非現実的な白い空間は、ソフィーの記憶の中での父との再会を表現しています。この場面は、過去の理解と和解への願望を象徴しているとも解釈できます。
『アフターサン』(2023)
結論:記憶と自己理解の旅
『アフターサン』は、記憶の曖昧さと、過去を通じて自己を理解しようとする人を巧みに描いた作品です。子供の頃に家族とハワイに行き、DVカメラを使用した経験のある私にとって、この作品は深く共感できるものでした。『アフターサン』は、単なる懐かしさを超えて、子供時代の映像を見ることで生じる複雑な感情を見事に捉えています。
