社会不適合者のシネマ日記

映画・商品レビュー

『バニシング・ポイント』(1971)未だに語り継がれる理由 [ネタバレあり]

https://eiga.com/movie/48046/photo/

はじめに

私はアマゾンでレンタルした『バニシング・ポイント』という作品が、現在でも一部の劇場で上映中*1であることを知りました。その作品に、かなりの衝撃を受けました。

50年以上前に公開された作品が、どうして今、再び劇場で公開されているのでしょうか。

あらすじ

ベトナム戦争名誉勲章を受け、レースドライバーや警官の職を経て現在は車の陸送で生計を立てるコワルスキーは、コロラド州デンバーから1200マイル離れたサンフランシスコまで、白の70年型ダッジ・チャレンジャーを15時間で届ける賭けをする。交通法規を無視して暴走する彼を警察が追う中、警察無線を傍受した盲目の黒人DJスーパー・ソウルがラジオで実況中継を開始。コワルスキーの逃走劇は世間の注目の的となるが……。*2

 

バニシング・ポイントの意味

そもそもバニシング・ポイントとはなんでしょうか。辞書で調べてみますと、透視図法の消失点のようですね。地平線のかなたにある希望のようなもの。いくら消失点に近づいても、消失点に達することはできない。

反体制であるヒッピーが、その後ヒッピーでい続けられたのか。おそらく、体制に従わざるを得なかったはずです。

みどころ

  • カーアクション

コワルスキーという男が白い車を運転し、ただただ砂漠を走り続けます。カーチェイスや衝突シーンが多く、アクションとしても楽しいです。スピードを上げた時のエンジン音が癖になりますね。

  • スーパーソウル

「スーパーソウル」という人物は、黒人かつ視覚障害者のラジオDJです。彼はラジオを通じてコワルスキーの車に語りかけます。彼は盲目ですが、ある意味ではコワルスキーよりも良く見えています。非常にハイテンションでやかましいと思われますが、何らかの能力を持っているようです。

また、彼は人種差別だけでなく、障害者差別を受けているようにも見えます。

ワンハリとの関わり

直前に、タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019) (以降ワンハリ)を観ました。ワンハリだけを観ると、ハッピーエンドのように思えますが、シャロン・テートについて知った後、非常に悲しくなりました。

ワンハリの時代設定は1969年で、今作品の時代と近いですね。1960年代のアメリカは、ヒッピーに代表されるカウンターカルチャーが台頭した時代でした。この作品には、いくつかのヒッピーが登場します。彼らは反体制的な思想を持っています。作品からは、「反体制であることは甘くない」というようなメッセージが感じられます。

コワルスキーが走ったのは賭けのためではなく、必死に自由を追求するためではないかと思います。

アメリカン・ニューシネマとして有名

監督はリチャード・C・サラフィアンという方です。どうやら他に代表作は無さそうです(失礼)。

しかし、アメリカン・ニューシネマ*3としては有名になりました。そして、あらゆる人に影響を与えました。(なんとタランティーノ監督が、「デス・プルーフ in グラインドハウス」でオマージュしているらしい!*4

最後に

一見するとロードムービーですが、なにやらメタファーが多いです。これはもしかすると、自分の人生に影響があるのでは? とさえ思った作品です。

特設サイトまであります。永遠のロードショーってのが良いね。

https://vanishingpoint2023.com/

 

 

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